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番外編 傷ついたので
志乃は、夜にどうしても見たいテレビ番組があると言う梓を連れてベッドに入り、気を遣いつつもセックスをし、甘い微睡みを味わっていた時だった。
バタバタと梓が起き上がりせっせと下着を履いてリビングに行く。
つい先程までアンアン言っていたくせに、今は何ともないふうに。
確かに気は遣ったけれどあそこまでケロッとリビングに行かれると流石に志乃のプライドに傷がついた。
起き上がる気になれず同じ体勢で天井を眺める。
先に寝てやろうか。そう思いつつもやはり梓が可愛いのでどうしても甘やかしてしまう志乃は、落ちてきそうな瞼を気合いでこじ開けていた。
そして三十分が経った頃、梓が下着を手で押えながら寝室に戻ってくる。
「これ志乃のパンツだった」
「……」
「あ、俺の履かないでね。伸びるから」
「……お前、なんでそんなに元気なわけ。」
「え?だって志乃、今日は手加減してくれたでしょ。テレビ見たいって言ってたから、優しくしてくれたんだなって思ってたんだけど。」
「……半分正解」
志乃はそういった答えが欲しいわけじゃなかった。
何だか少し呆れてしまって、こじ開けていた目を一瞬で閉じる。
「あー!志乃。寝ちゃうの?」
「眠い」
「テレビ終わったから、まだできるよ?」
「え、今の休憩の時間だったのか。さすがに色気も何も無くて勃たない。」
「ひどい!」
「……お前がな」
寝返りを打った志乃は本当にこのまま眠ってしまおうと、呼吸をゆっくり深くした。
けれどそれを許さなかった梓は志乃の腰辺りに跨り、無駄な肉の付いていない綺麗な肌をした頬にチュッとキスをする。
「志乃ぉ」
「寝る」
「でも不完全燃焼なんだもん」
「はは、そうか。俺もだ」
「……なんでイジワルするの」
「お前が先に俺にイジワルしたんだろ」
「してないよ」
「された。傷ついた。さっきまで泣いてた」
サラサラと嘘をついた志乃に騙された梓が、短く声を上げてあからさまに慌て出す。
「な、泣いたの?ごめんなさい。俺、何かした……?」
「した。もう暫くセックスしたくない」
「ひっ……!」
梓はショックを受けた。
始めはもちろん、無理矢理されていたセックスも、今となってはそれが無いと満足できない身体になっていた。
それなのに『暫くセックスしたくない』という志乃の言葉に、自分は本当に志乃を傷つけてしまったのだと思った。
「志乃、志乃。俺、何をしちゃった……?」
「言わない」
志乃はもちろん、プライドを傷つけられたことを言っているが、それを口に出して言うのはなんだか恥ずかしかった。
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