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第31話

卵焼きを作り終えて立岡の所に行こうとする俺の後ろをついてくる梓。 「梓、寝室に行ってろ。お前を立岡に会わせる気は無いんだ」 「···なんで?」 「立岡は─···」 続きを言おうとした時、「出来たー?」と俺達の前に現れた立岡。 「あれ、梓君じゃん!やった、会えた!」 「チッ」 梓はすぐに俺の後ろに隠れるが、立岡にそんなものは関係ない。 「卵焼きいただきー!梓君も食べよ!志乃の卵焼きってめちゃくちゃ美味いから!」 「···でも」 ちらっと俺を盗み見た梓。 立岡に見られたなら、もう仕方が無い。 「いい。行ってこい」 「···怒ってる?」 「怒ってない」 梓が不安そうに俺を見上げてくる。 本当に怒ってなどいないから、頬にキスを落とすと、怒っていないことがやっと伝わったようで立岡と一緒にリビングに行く。 「梓君はネギ食べれる?」 「はい」 「よかった!はい、食べてみて!」 立岡が箸で摘んだそれを梓の口元に持っていく。躊躇うことなくそれを口に入れた梓。途端、頬を緩ませて柔らかい表情をする。 「ね?美味しいでしょ?」 「うんっ、美味しい···」 「ふっ、なんか、普通の子だね」 立岡が意味深な言葉を言うから梓の柔らかい表情は消えて、睨むように立岡を見ている。 「志乃のお気に入りなら、もっと変わってると思ってた」 「···凡人ですみません。」 「いやいや違う。変わってる子じゃなくてよかったって言いたいんだよ」 理解ができないらしい梓は小首を傾げて立岡を見る。立岡はニコリと作った笑顔を見せて卵焼きを口にする。 「あー、さすが。美味しいよ志乃」 「よかったな」 「料理の上手いお前とパートナーで俺は助かるよ。」 パートナーという言葉に反応した梓が俺と立岡を何度も繰り返し見る。 「パートナー···?仕事?」 「そう。でもそれだけじゃないかな。とにかく色々について」 「···そうですか」 立岡の前に座っていた梓が突然立ち上がり、俺の目の前に来た。 「どうした」 「···膝、座る」 「ああ」 ムスッとした顔でそう言った梓は俺の膝に座り、そこから点いていたテレビを眺めている。 「あ、忘れてた」 「何だ」 突然立岡が大きい声を出した。

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