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第33話

風呂から上がった梓。 髪を乾かすと、そろそろいい時間になった。 スーツに着替えて格好を整える。 「出るぞ」 「え、もう?」 「ああ。」 外に出ることに興奮してるのか、足の枷を取ると梓は少しだけ顔を活き活きとさせている。 「梓」 「何?」 「俺から絶対に離れるな。本家についてもな」 「わかった」 靴を履いて玄関を出る。 俺や立岡はそれが当たり前だが、梓にとっては2週間以上前までしか味わっていなかったそれに、今すぐにでも走り出すのではないかと言うほど、体をうずうずとさせていた。 「お前はこれから俺の親父に会う。意味が分かるか?」 「え?ぁ···わかんない」 「ブッ!意味わかってなかったの!だからそのテンションでいられるんだね!ふっ、あははっ!!」 馬鹿にするように立岡に言われて梓は機嫌を悪くする。 「つまりはね、眞宮組のてっぺんの人と会うんだよ。ここら一帯を纏めてる極道の1番上。わかる?」 「ヒッ!」 「でも君がさっきからタメ口で話してる志乃は2番目だよ。だからそんなに大差ないと思って強気でいたんだと思ってたけど、違うんだねえ。面白い」 梓は顔を青くし、慌てて俺の様子を伺い、「ごめんなさい」と謝ってくる。別に謝られるような事はされてはいない。 「立岡、からかうな」 「あははっ、ごめんごめん」 後部席に梓と立岡を乗せる。 万が一、梓が脱走をしようとしたなら、力尽くでも止めるようにと立岡に頼んだ。

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