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第37話

志乃のお父さんの部屋を、志乃と出ると力が抜けて床に座り込んだ。 「何してんだ」 「···志乃」 「あ?」 「抱っこ」 立つことが出来なくて手を伸ばせば溜息を吐きながらも、抱っこしてくれる。 「部屋連れていく」 「部屋···?志乃の?」 「ああ」 志乃に抱っこされたまま廊下を歩き、一つの部屋の前について中に入る。 「梓」 「···何」 「黙ってたことは悪かった。それから、従兄弟であるお前をあんな扱いしたことも···」 「···言えなかったんでしょ。仕方ないよ。」 ベッドの上に下ろされて、下から志乃を見上げると悲しそうな顔をしてる。 「···もう、足に枷をつけないで欲しい」 「ああ」 「それから···記憶を思い出すのを、手伝って」 「···さっきは勢いのまま言ったが、記憶喪失になったということは、それ相応の事があったってことだ。今のお前がそれに耐えられるとは思わない。だから別に、思い出さなくていい。」 「···でも、記憶、ちゃんと取り戻したい」 自分の知らない自分がいる。 それはなんだか嫌で、志乃にそう言うと渋々ながらに頷いてくれた。 「あ、あと」 「まだ何かあるのか」 隣に座った志乃が面倒そうに聞いてくる。 「従兄弟同士なんでしょ?ならもう、セックスとか···やめようよ」 「あ?」 「だ、だって、」 志乃の怖い声に怯えて床に視線をやる。 横から伸びてきた手が俺の肩を掴み、ベッドにそのまま押し倒されて、視界はすぐに床から天井になった。 「従兄弟同士でも結婚できる世の中なんだからよ、別に問題はねえぞ」 「そ、そんなこと言ってるんじゃなくて···っ」 「あ?じゃあどういう事だよ」 なんで、わかった。で終わらせてくれないの。 そう思い、伝えることに躊躇しながらも口を開く。 「こういうのは、好きな人とやって!俺と遊ぶくらいなら女の人とした方が楽しいでしょ!?志乃は格好いいんだから、女の人には困らないと思うし!」 「···お前、俺のこと格好いいと思うんだな」 「そ、そりゃあ···」 ちらっと見れば整ったその綺麗な顔が目に入って羨ましいなと思う。 「···まあ、やめねえよ。この関係は」 「え···」 「俺は俺の好きな時にお前を抱く。」 「何で···」 「1回も2回も同じだろ。今更やめねえ」 そう言った志乃は俺の頬に軽くキスを落とす。 それの意味がわからなくて戸惑うだけの俺の頭を志乃は優しく撫でた。

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