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第39話
志乃に何度か名前を呼ばれて、ハッとする。
感じすぎて多分、意識が飛んでいたんだと思う。
「風呂行くぞ」
「···眠たい」
「聞いてねえ」
腕を持たれて体を引っ張られる。
力を抜いてされるがままになっていると舌打ちをされ、抱っこされる。
「志乃」
「何だよ」
「家、帰りたい」
「だから、テメェの家はもう無い」
「大学···」
「諦めろって言っただろ」
風呂場について温かいお湯を顔面にかけられる。
「ブッ!」
「顔洗え。グチャグチャだ」
「···グチャグチャなのは、元からです」
「あ?」
じっと志乃を見ると突然笑い出した。
何がそんなに面白いのか、俺はこんなに不愉快なのに。
「とにかく洗え。それから飯だ」
「···わかった」
一頻り笑った志乃はそう言って湯船に浸かる。俺は大人しく自分の体を洗って、それを確認した志乃も体を洗い、そうして2人で風呂場から出た。
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