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第42話 志乃side

投げつけられた箱ティッシュを元の場所に戻す。 あの面倒臭い生き物はどうにかならないのか。 初めはまた出会えてよかったことから可愛いと思っていたが、憎たらしさが増している。 「また前みたいに躾ねえとダメなのか···?」 風呂から上がってきたらまた枷でもつけてやれ少しは大人しくなるか? 「はぁ···」 溜息と共に紫煙を吐き出す。 煙草の火を消してテレビをつけ、ソファーに寝転び目を閉じる。 今日は夜に出なきゃいけない。 梓が眠った後に行くつもりで、でもその間梓が家を出ていかないかが不安だ。 どちらにしても枷を付けておくしかないな。 「···志乃」 「あ?」 閉じていた目を開ける。いつの間にか風呂から上がった梓がこっそりと俺を見ていた。 「···お腹空いた」 「お前、怒っていたと思えば今度は腹が減ったのかよ。」 「···お腹空いちゃったの。何か食べたい」 「ならその前にこっちに来い」 最近まで梓に付けていた枷を、梓に見えないようにこっそりと用意した。 こいつが大人しくこれを付けられる訳が無い。 「何?」 「目閉じて。言うこと聞けたら何か作ってやる」 「うん」 そう言うと大人しく目を閉じた梓。 逃げないように抱きしめ、足に枷をつける。 「え」 「もういいぞ」 「な?え、何で?何でこれ···?」 「お前に出ていかれたら困るから。じゃあ飯作ってやるよ。何がいい」 「ふ、ふざけんな!!」 いきなり拳で殴られて、ついつい顔を歪めてしまう。 「逃げない、よ、今更···」 「念のためだ。散々帰りたいって言ってたんだ。わかるだろ」 「···俺のこと、信じてくれないの」 「信じる?どうやってだよ。俺のことも忘れてるくせに」 俺のその言葉は梓を怒らせるには十分だったらしい。 「大っ嫌い!!」 「あ、おい!」 リビングから出ていった梓は、多分、泣いていた。 「···記憶のことは触れちゃいけなかったか」 飯はどうすればいいのだろうか。

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