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第52話

翌日、志乃は朝から仕事に行って、俺は家で一人。 昨日、本を読んでもいいって言っていたから、志乃の書斎に入って本棚に並ぶ本を見る。 「··········」 その中の1冊を取り出してページを開ける。その時型がついたのかやけに開きやすいページが開き、そこから写真が落ちていった。 「···女の人だ」 その写真に写るのは綺麗な女の人。志乃のお母さん?と思ったけれど、写真の隅に書いてある日付はほんの数年前のものだし、写っているその人は二十歳前後に見える。大切なものなのかもしれないと思って、もとあったページにその写真を戻し、本を閉じる。 「これ読も」 少し難しそうなミステリー小説を手に取って、書斎にある椅子に座り内容に目を通す。 それは思っていた何倍も面白くて、読み始めたら途中で止められない程物語に引き込められる。 いろんな感情が湧き出てきて、ぶっ通しで本を読み続け、最後のページを読み終わり本を閉じるとほぼ同時。 「終わったか?」 「っ!」 志乃の声が聞こえてきて肩が上がる程驚いた。 声のした方へ振り返ると志乃が立っていて、慌てて「おかえりなさい」と声をかけた。 「ああ。お前の教科書はリビングに置いておいた。」 「あ···ありがとう」 「···ずっと読んでたのか」 「う、うん」 志乃は俺の返事を聞いてすぐに向こうを向いてリビングに行ってしまう。それを追いかけてリビングに行くと教科書がたくさん積まれていた。 「それで合ってるか?足りないなら言え。」 「ちょっと待って」 確かウェブ上に必要な教科書が出されているはず··· 「あ」 「何だ」 「···パソコンかスマホ借りたい」 今は何かを検索できる機器を何も持っていない。頼めば貸してくれるだろうと、そう言ってみると志乃がポケットから一つのスマートフォンを取り出した。 「···お前の持っていたやつは解約した。これ使え」 「解約したの!?施設の番号とか全部入れてたのに!」 「解約しただけだ。データはこっちに移してある。バックアップもとってあるし無事だ。」 渡されたスマホを起動させ、データを見てみると、確かに前と何も変わっていない。データを入れる箱が変わっただけだ。 「今日の夜から、明日の昼まで帰ってこない。」 「···仕事?」 「ああ。何かあれば連絡しろ。あとインターホンが鳴っても絶対に開けるな。飯はちゃんと食うこと。わかったか」 「はい」 それだけ言うと志乃はキッチンに消えて、お昼ご飯を作ってくれた。 志乃の作るご飯は美味しい。 「これ食べたら少し寝るから何かあったら起こせ」 「うん。何時に起こしたらいいとか、ある?」 「いや、自分で起きるからいい。」 志乃の言葉にウンウンと頷いた。

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