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第54話
20分程して出てきた志乃。ちょうど電話をしていて邪魔をしてはダメだなと思いながら、さっきまで読んでいた本の続きをソファーに座りながら読む。
「その件は立岡に回せ。あとはあいつが片付けないとどうにもならない。···ああ、20時に。じゃあな」
本を閉じて志乃の方を振り返る。志乃が俺を見ていた。それから眠そうに一つ欠伸をして、俺の座る隣に腰を下ろした。
「20時に部下が来る。そのまま仕事に行く」
「うん。部下って···夏目さん?」
「ああ。その時は書斎には入るな。仕事の話がある」
「わかった。」
また本を開くと、それ以来志乃は話しかけなくなった。
「はぁー···面白かった」
そう言うと目の前の机にコトっとカフェオレが置かれた。顔を上げると志乃が珈琲を飲んでいる。
「あんまりずっと本を読んでると目が疲れるだろ」
「···ありがとう。でも面白くて。志乃の持ってる本は全部面白いね」
「そうか。···好きなだけ読んでいい」
「うん」
少し休憩して、お風呂掃除と洗濯物を二人で一緒にやった。夜ご飯はまた志乃が作ってくれて、それを食べて、テレビを見ているとインターホンが鳴る。
「悪い、洗い物頼む」
「うん、置いといて」
志乃が玄関に行く。そのままこっちに来ることなく書斎の方に入ったらしい。
俺は皿洗いをして、またテレビを見ていた。
暫くすると志乃がリビングにやって来た。その後には部下である夏目さんがいる。
「梓」
「うん」
「夏目だ。何かあって俺に連絡がつかない時は夏目に言え。」
「わかった。···夏目さん、佐倉梓です。よろしくお願いします」
立ち上がって頭を下げながらそう言うと、夏目さんは優しく笑う。
「夏目です。こちらこそ、よろしくお願いします」
「仕事行ってくる。本は読んでてもいいが、ちゃんと寝ろよ」
「はい」
返事をすると志乃はすぐに夏目さんと一緒に家を出て行った。
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