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第56話

出発する時間になって、神崎はやっぱり夏目を置いていくと判断した。それを夏目に伝えると申し訳なさそうな顔をして、それから俺に謝った。 「梓の事で揺らいでんのか?もしそうなら···このタイミングで会わせて悪かった。」 「っ、あの、···すみません」 そうして俺は夏目以外の幹部と組員を連れて現場に向かう。そこには既に怪しげ奴らが数人いて、それを見た幹部は獲物を見つけた猛獣のように目をギラつかせ始めた。 現場の隅に隠れ取引の現場を目撃し、証拠を掴む。 「行け」 俺が一言そう言うと幹部を含んだ組員達は動き出し、そこにいた密売に関係する奴らはすぐに捕えられた。 *** 「親父に報告してくる。お前らは捕まえた奴らを地下に連れていけ。」 本家につき幹部に指示を出した。親父の部屋に行くと真夜中だというのに仕事をしていて、親父も大変だなと思う。 「笹山に連絡する。」 報告をすると親父はすぐさまそう言った。笹山とは警察の偉いさんだ。俺たち眞宮組と繋がっていて、警察にはできない仕事をこちらが受け持っている。 「まあ、全員捕まるだろうな。」 「そうだな。」 「じゃあ俺の仕事はここまでだな。組員に見張りを頼む」 「ああ」 親父の部屋を出て、組員達に捕まえた奴らを交代で見張るように指示し、俺は自室に入り煙草を吸う。 そのすぐ後、ノック音が聞こえ「夏目です」と声が聞こえ、紫煙とともに「入れ」と言葉を落とした。

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