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第61話 梓side
志乃が帰ってこない。
今日の昼には帰ってくるって言ってたのに。
スマホにも何の連絡も入ってない。俺は時間を潰すのにあれこれ面白いことを探したけれど、どうにもいい方法が思い浮かばない。仕方なくまた志乃の書斎に入り、本を探してページを開いた。
けれど内容はどうに頭に入ってこない。
それは多分、志乃の部下である夏目さんのことが気になるからだ。
俺にはどうにも志乃と夏目さんが上司と部下よりももっと近い関係なんじゃないかなって思えた。
それは志乃が驚くほど美形で、夏目さんもすごく整った顔をしていたからかもしれない。
あの二人が並んでいるとオーラが凄くて、圧倒されそうになる。まあ、夏目さんも男だし、恋人とかじゃなくて仲間意識が強いだけなのかもしれない。
「···そういう事にしておこう」
ググっと伸びをして欠伸をこぼす。
それにしても暇で暇で仕方が無い。
「あ、ご飯のこと忘れてた」
またご飯を食べてないことを志乃に怒られるのは嫌だ。急いでキッチンに行って、料理ができない俺は、残っていた白米に卵とだし醤油をかけて、卵かけご飯を作り急いで胃の中に入れた。
それから数十分後、玄関が開く音がして、志乃が帰ってきたことを知る。
「志乃!」
「ああ、ただいま」
「おかえり」
リビングまで来た志乃の近くに寄る。志乃からは優しいボディーソープの匂いがした。
「仕事大変だったの?」
「あ?何で」
「さっきお風呂入ったんでしょ?ボディーソープの匂いする」
「···そうだな」
そうして俺の頭にぽん、と手を置いた志乃。
そんな志乃をしたから見上げると、その逞しい首にあったもの。
「···っ」
それは、誰に付けられたキスマーク何だろう。
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