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第64話
志乃の作ってくれたご飯を食べて、お風呂に入る。
そこで一つ疑問が生まれた。どうして夏目さんのお姉さんの写真を志乃が持っているんだろうって。
でもその経緯は簡単に聞けることじゃない。
「···たまたま?仲良かったとか?」
でもそれは納得いく答えじゃない。
ぶくぶくと息を吐きながら湯船に鼻まで浸かる。
ザバッと浴槽から上がり、そのまま脱衣所に出て体を拭く。服を着てリビングに行けば志乃は煙草を吸いながらビールを飲んでいた。
「上がったよ」
「ああ」
「俺もお酒飲みたい」
「冷蔵庫に入ってる。飲んでもいいが酔って面倒な事するなよ」
「はーい」
キッチンに行き冷蔵庫から甘めのお酒をとってリビングに戻る。
缶のプルタブが開かなくて苦戦していると、志乃がさっと開けてくれた。
「お前そんなに甘いの飲むの」
「え、志乃が飲むから置いてたんじゃないの?」
「いや···誰かが置いてったか」
「ふーん···ん、これ美味しい」
志乃は煙草の火を消して、ビールを喉奥に流し込む。
「風呂入ってくる。」
「はーい」
チビチビとお酒を飲みながらテレビを見る。
つけた番組はバライティー番組で、楽しくてケラケラ笑ってしまう。
さっき不思議に思っていたことなんて忘れちゃうくらいに。
「ん···もう1本」
お酒が無くなってもう1本同じのが冷蔵庫にあったのでそれを取り、今度はなんとかプルタブを一人で開け、またお酒を口に入れる。久しぶりに飲んだそれは美味しくて止まらない。
「志乃まだぁ?志乃、志乃ぉ」
お酒を机に置いて志乃を探す。お風呂に入ってるのはわかっていたから、お風呂場に行って「志乃ぉ!」と名前を呼んだ。
「何だ」っていう、少し響いて艶のある声がドア越しに聞こえてきて嬉しくなる。
「早くぅ!」
「···酔ってんのか」
「酔ってないから早くー!!」
「はぁ···」
溜息が聞こえてきて、ムッとしちゃう。お風呂場のドアを開けようとドアに手をかけると、勝手に開いた。わぁ、すごい。自動ドアだぁ!
「ふふっ、自動ドアだ、楽しいっ!」
「···タオル取れない」
「あのねえ、自動ドアだよ」
「はぁ···」
志乃は俺を退けてタオルを取り体を拭いている。バキバキに割れた腹筋がかっこよくて手を伸ばし、触ると志乃にやめろって怒られた。
ささっと服を着た志乃が俺を見下ろす。
「もう寝ろ」
「んぅ、つれてって」
「···面倒くせぇ」
ひょいって体が浮いた。楽しくてキャッキャッ笑う俺を志乃は面倒くさそうにしてる。ベッドに下ろされて志乃をぼーっと見上げた。
「志乃も寝よ」
「俺は仕事」
「やぁだ!寝るの!」
志乃の服を掴んで離さないでいると、志乃は仕方ないというように、隣に寝転ぶ。
「おやすみ」
「ん、うん、おやすみぃ」
志乃がお腹をぽんぽんと優しく叩く。
気づいたら目を閉じて、眠りに落ちていた。
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