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第75話
「え···でも、迷惑じゃ···?」
「迷惑じゃない。むしろお前に今出て行かれた方が迷惑だ」
「わかりました。じゃあ···買い物、後で一緒に行きます」
その返事に満足して、煙草を手に取る。
「夏目は···料理出来たよな?」
「はい。でも志乃さん程美味しいものは作れません」
「そんな事ねえよ。一番好きな食べ物は?」
「んー···。クリームシチューとか··?」
「疑問形かよ」
煙草を口に咥え火をつける。
「ホワイトソースとか、クリーム系の食べ物が大好きなんです。」
「なら今日の晩飯はクリームシチューだな。昼は何が食べたい?」
「昼は···思い付かないです。それより志乃さん」
「ん?」
「俺も吸いたいです」
夏目がそう言うから、煙草とライターを渡してやるとその場で吸い始め、ふぅ、と息を吐く。
「昼はオムライスでも作るか」
「わあ!俺オムライス好きです!」
「ならそれで決まりな。」
煙草を吸い終えてソファーに座る。
あとを追ってきた夏目が俺の膝の上に、向かい合うように座った。
「志乃さん、セックスしましょう···?」
「今からか?後で買い物行くんだろ。」
「買い物にも行くけど、志乃さんが欲しいです。···ねえ志乃さん、お願いです。俺だけのものになって」
夏目は今、不安定だ。ショックなことがあれば一気にバランスを崩して深い闇の中に落ちていってしまうかもしれない。そう考えた俺は「わかった」と言って夏目にキスをする。
嬉しそうに笑った夏目は俺の真意には気付いてない。
「ぁ···志乃さ、ベッド···ベッド、行きませんか」
「ああ」
夏目をそのまま抱き上げ、ベッドまで運び押し倒す。求められたことを与えるだけでバランスが取れるなら、俺はいくらでもお前を壊さないように、自分を差し出すことが出来る。
「ん···ぁ、撫でて···気持ちいい」
夏目の頬を撫で、キスをしながら服を脱がせる。そうして夏目に自分を与え、梓には何もしてやれずに、遠ざかっていく。
なら、せめて立岡に見張らせよう。
何かあった時、すぐに動けるように、梓に見張りをつけることを考えた。
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