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第83話 梓side

朝起きて支度をする。 俺だけしかいない静かな部屋に響くのはテレビの音。 「···お腹空いた」 パンを焼いて甘めのカフェオレを作り、食べる。どうやら今日は雨らしい、お天気お姉さんが傘を持っていくようにと教えてくれる。 「眠いぃ···」 嫌々ながらも支度を済ませ、立岡さんを待つ。 丁度10時になった頃、インターホンが鳴って、玄関を開けると「おはよ」と立岡さんが片手を上げて立っていた。 「行くよ」 「はい」 立岡さんの車に乗って学校まで向かう。あ、そういえば。さっきお天気お姉さんが折角教えてくれたのに傘を持ってくるのを忘れた。 「今日雨なんですって」 「え、嘘。でも梓君、傘持ってなくない?」 「忘れちゃいました。最悪買います」 「帰ったら間に合わないもんね。お金ある?」 「あります」 そんな会話をしながら、でもこれは自分のお金じゃないなと反省する。 早くアルバイトを見つけないといけない、志乃に監禁される前、一人暮らしをしていた時は派遣をしていて登録をすれば誰でもできた仕事をやっていた。それを再開するのも有りだなと思い、スマホを出す。 「何かするの?」 「アルバイトしないとなって」 「え、何で!?やっぱりお金無い?」 「あるんですけど、俺のお金じゃないから···」 派遣のサイトを検索して、内容を確認する。 そんな俺のスマホを立岡さんはひょいっと奪い取った。 「ダメダメ。せめて俺のこの仕事に区切りがついてからにして。俺の活動時間が長くなっちゃう」 「別に送り迎えとかしてもらわなくていいし、自分でできますから!」 「違うって、俺の仕事なの。君が送迎を断っても俺の仕事なんだから仕方ないでしょ。文句なら志乃に言ってくださーい。ていうかむしろ今からでも志乃と話す?」 「話しません。学校に行きます」 「つれないなぁ」 暫くして学校につく。どんより曇ってる空。今にも雨が降りそう。 「じゃあねぇ。頑張って」 「はい。ありがとうございます」 立岡さんの車が見えなくなるまで正門に立って、それから校内に入った。 そんな時、頬にポタリと雫が落ちてくる。 一度それを感じると度々体に水滴が落ちてきて、途端、胸が苦しくなった。 どうしてかはわからない、けれど呼吸が早くなって、急いで建物の中に入り、見つけたトイレの個室に飛び込んだ。

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