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第97話
半分程食べて、満腹になったようで、お粥を机に置き冴島を見る梓。
「お腹いっぱいかな?」
「···うん」
「そう。じゃあ少し眠ろうね。ベッド行こうか」
梓を支えてリビングから出る冴島。
三人だけになり、肩の力を抜いた。
「梓君、まずいね。もう殆ど壊れてるじゃん」
「···そうだな」
「雨が嫌だって言ってたけど、今週はずっと雨だよ。台風とかなんとかって言ってたし」
「ああ。しばらく見ておかねえと···」
そう言うと夏目が俺の手を取って、小さな声で「嫌だ」と言った。
「志乃さんは···俺のです」
「でもそうも言ってられないでしょ?梓君が死んでしまったらどうするの。」
「っ、それは···っ」
「お前は身内が死んで辛い思いをしてるんだろ?志乃のことは考えないわけ?」
夏目を追い詰めるような言葉を吐く立岡を止め、夏目の手を離させる。
「梓は従兄弟だって、さっきも言っただろ。見捨てられない。」
「···ごめんなさい。」
「いや、いいよ。」
そう話をしていると携帯がなって、冴島からの電話だった。
「はい」
「すぐに来てくれ」
それだけ伝えられ、急いで一人で寝室に行くとベッドの上で梓が寝ながら泣いていた。そんな梓を冴島が宥めていて、俺は何をすればいいのかわからない。
「こっちに来て隣に寝転んで」
「ああ」
言われた通り、梓の隣に寝転んだ。
そっと梓を撫でると、濡れた目が俺を見上げてくる。
「志乃···志乃だ···」
「眠れないか?」
「···ん、寝れないの。でも···志乃がいたら、大丈夫」
「なら一緒にいるから、ゆっくり休め」
ゆっくり瞬きをして、それと同時に目に溜まっていた涙が零れ落ちる。
「おやすみ」
「ん···おやすみなさい」
少しすると穏やかな寝息が聞こえてきて、梓の濡れる頬を撫で、そっと抱きしめた。
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