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第102話
お風呂から上がると冴島さんは仕事があったらしく、帰っていた。
「もしかして俺のせいで、ずっと仕事行けなかったのかな。大丈夫かな···?」
「今さっき呼び出されたところだ。お前は関係ないし、大丈夫だ。」
「···そう」
それでも何か迷惑をかけていたんじゃないかと思うと申し訳が無くて、視線を落とした。
「梓、気にしなくていいから」
「···うん。気にしない」
「こっちおいで。」
志乃がソファーに座って、両腕を広げた。
吸い込まれるようにそこに向かい志乃に膝に座って、逞しい胸に頬を付ける。
「本当に気にしなくていい。それにあいつ、帰るときにお前と居たいって駄々こねてたくらいだ。迷惑なんて感じてねえから、な?」
「うん」
「···もう落ち着いたか?」
「落ち着いた。でも···明日も雨なんでしょ?···俺、もうこの世界で生きていく自信ない。」
そんなふざけたことを言うと志乃は優しく俺の髪を撫でる。その大きな手が好き。その優しいところが好き。でも···優しすぎるところは嫌い。
「もっと撫でて」
「撫でられるの好きか?」
「うん。安心するの」
志乃の匂いを嗅ぐとドキドキして、何故だか体が熱くなる。嬉しい。もっと、もっと触ってほしい。
「志乃、もっと···もっと、触って」
「梓?」
「っ、我儘言ってもいい···?」
そうだ、さっき決めたその時は、今の事なんだ。
「何だ」
「···セックス、しよ」
志乃から離れたくない。
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