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第105話 志乃side
眠る梓の額にかかる髪を退けてやる。
頬には涙の跡があって、それが胸を締め付けた。
夏目には、両親がいる。
それを夏目は見て見ぬ振りをしているから、その誤解が解けたのなら、俺でなくても安心することが出来るはずだ。
行為をしている最中、梓が何度も伝えてきた言葉に、何故か俺が泣きそうになった。
梓のセックスがしたいという願いを聞いたのも、多分、俺が梓を好いているからなんだと思う。
だからまずは夏目と夏目の両親の誤解を解かないといけない。そうすればきっとこの関係ももっといいものに変わるはずだ。
「···もうちょっと、我慢してくれ」
ずっと我慢させていたのに、また我慢させるなんて酷いに決まっている。
「すぐ終わらせるから」
眠る梓の唇にキスをして、隣に寝転んだ。
***
「んぅ···」
もぞっと隣で梓が動いたのを感じて、目を開ける。時間は丁度昼を跨いだ頃で、そろそろ起こして飯を食べる時間だなと、服を着た。
「梓、起きろ」
「···やぁ···」
「やだじゃねえよ。起きろって」
両腕を持ち、引っ張って体を起こさせると。寝ぼけた目が俺を見てへにゃりと笑った。
「ぁ···ん、志乃の出てきた···」
「···風呂入って」
「ふふ、二回目だね」
「そうだな」
何が面白いのか笑う梓に、とりあえず頷いておく。
突然動きたくないと駄々を捏ねだした梓を抱き上げ、風呂に連れていく。
「志乃もお風呂入ろ」
「わかったから、手離せ」
梓を風呂場に下ろして、俺も服を脱ぎ中に入った。
「梓、中の出すぞ」
「ん···」
椅子に座って梓を向かい合わせに膝の上に座らせた。足を開かせて後孔に指を突っ込むとドロッとした精液が溢れてきた。
けれどきゅっと後孔が締めつけられて、梓が甘い声を漏らしたことでそれが止まる。
「こら、力抜けって」
「ぁ、あ!んっ、だって···っ」
「あとちょっとだから我慢しろ」
梓が唇を噛んで耐えている。傷をつけるなと冴島に伝えられていたので、梓にキスをして噛んでいた唇を舐めた。
「噛むな。どうせ噛むなら俺の肩でも噛んでろ。自分に傷をつけるようなことはもうするな」
「···んっ」
そう俺が言うとすぐに肩に噛みつかれ、かと思えば梓の舌が俺の肩から首、鎖骨を舐めてそこにキスマークをつけていく。夏目にバレたらやばいか?と思いながらも止めることはしない。何故なら嫌な気が全くしないからだ。
「ん、出来た。体洗うぞ」
「洗って」
甘えてくる梓に、小さい頃を思い出して、思わず口元が緩む。
「志乃、何で笑ってるの?」
「昔を思い出しただけだ」
梓が不思議な顔をしていたけれど、気にせず梓と自分の体を洗った。
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