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第111話 志乃side
梓と速水の応援に向かったのは相馬。GPSを使い、部下を連れて今まさに向かってくれている。
なのに俺は、本家の自室で夏目と対面していた。
「緊急事態だ。早く動かねえと間に合わない。今は話をできない」
「···もし、今の梓さんが俺でも、そうやって助けてくれますか?梓さんが大切なんでしょう?志乃さんは···俺のものなのに。」
「そんなこと言ってる場合じゃねえってことは分かってるだろ。いい加減にしねえと怒るぞ」
部屋から出ようとすると夏目が目の前に立って退いてくれない。梓と速水が危険な目に遭っているのに、夏目はまるで自分のことしか見ていない。
「正直、速水には悪いけど、梓さんには帰ってきて欲しくないっ!」
「もう一度言ってみろ。───殺すぞ」
初めて夏目にそんなことを言った。
胸倉を掴み壁に押し付ける。
「だって、だって···そんな、キスマークだってつけて帰ってきたじゃないですか!!志乃さんは俺のでしょ!?」
夏目が俺の胸を叩く。
今はこんなことをしている場合ではないと、夏目を離し、前から退かせて部屋を出る。
「志乃さん!!」
聞こえてくる夏目の声を無視して、親父の元に行き今の状況を説明すると、俺も現場に向かうように言われ、幹部室に残っていた神崎と、神崎の部下を連れて本家を出た。
「速水に相馬がいるなら、もう無事だと思いますけど」
「ああ。だが一応の為だ。親父の命令でもあるしな」
「今こうして外に出るのは、若が危険じゃないですか?」
「俺はどうでもいい。梓を守らねえといけねえんだ」
猛スピードで車は走り、ついた現場は悲惨なもので、血を流した奴らが何人も倒れている。速水は相馬が来るまで1人で梓を護りながら戦っていたせいで、至る所を怪我している。
そんな速水を護るように前に立つ相馬は、部下に指示を出して残っている奴らを仕留めていった。
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