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第112話
「相馬、速水」
「若!」
2人に近づくとすぐ、梓は後ろにいると道を開ける。目を閉じて耳を塞いでいる梓の手には小型のナイフがあって、一応の為に速水か相馬が持たせたことが容易に想像出来た。
「梓」
そのナイフを持っている腕を掴み、引き寄せる。顔を上げた梓は涙を流して、俺を見るとナイフを手から離し抱きついてきた。
「志乃···っ」
「ああ。怖かったな。よく頑張った」
「···お、俺の···せい、で速水さんが···っ」
「お前のせいじゃない。」
梓を抱き上げ、残りの処理は相馬と相馬の部下、そして神崎の部下に任せて、俺と梓、神崎と速水で先に本家に帰る。
「速水さ···痛い···?これ、痛そう···ごめんなさい、俺、何も出来なくて···っ」
「あはは、いいんよ。俺の指示はちゃんと聞いてくれたし。おかげで思う存分動けたから。この程度で済んだのは梓くんのおかげ。ありがとうね」
「ぅ···、お、俺の方こそ、ありがとうございます」
速水はまだ興奮が収まっていないようで、口調が普段と違っている。
普段は標準語を話すくせに、今は関西弁が混ざっていて、聞きなれないイントネーションにほんの少し興味が湧く。
「若、着きました」
「速水はちゃんと手当してこい。神崎、付き合ってやれ」
「はい」
梓を連れて自室に行く。
そこにはもう夏目はいなくて、ゆっくりとベッドに梓を下ろして、頬を撫でる。
「ちょっと待っててくれ。親父に報告してくる。」
「···うん」
梓が無事なことと、速水が怪我をしたこと。
今の処理は相馬と相馬の部下、それから神崎の部下に任せていること。
伝えるのはそれだけで、後は相馬が報告をすればいい。すぐに戻ってこれると予想し、梓と離れた。
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