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第116話 志乃side

梓が出て行った部屋で1人、ぽつんと座っている。親父が部屋にやって来て、頭を叩かれた。 「梓と夏目に辛い思いをさせてるのはお前のくせに、梓を責めるのか。」 「話聞いてたのかよ」 「ああ。梓が大切だからな。···お前の中途半端な行動に巻き込まれて苦しんでる梓を、放っておくわけがねえだろ。」 「···っ、行動はしてる。夏目の両親に話をするために時間だって設定した。けど、夏目が動こうとしない!」 やけになりそうな位、気持ちが昂る。 もう全部をやめて、初めからやり直したいくらいに。 「それは誰のせいだ。てめぇが今までノロノロとしてきたからだろうが。夏目の親と話す時、夏目は要らない。お前がさっさと話をつければいいだけだろう。」 「·············」 「甘ったれてんじゃねえぞ。梓はずっと成長してる。記憶を思い出して、散々自分を痛めつけてきた男に対して、やり返すことも覚え始めてるんだろう。それはさっきの夏目との事でわかったはずだ。今迄ならきっとそれができなかった。」 結局俺は、俺の都合に梓を巻き込んでいるだけなのか。親父の言葉に間違っている所は無くて、ただ頷く。 「今日だってお前のせいで危ない目に遭った。···離れるなら、それでいい。夏目のことを終わらせて必ず梓を迎えに行くならな」 その言葉に頷いて立ち上がる。 「明日、夏目の親のところ行ってくる。」 「ああ。」 そして、早くけじめをつけて···梓を俺のところに連れ戻す。 俺はきっとそれができる。そう思いながら親父の部屋を出て、自室に戻った。

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