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第122話

日も跨いで、沢山話をした。いつの間にか俺も冴島さんも眠ってしまっていて、朝起きてご飯を食べる。 学校に行かなきゃな思う反面、昨日あんな事があったのに学校に行くのは怖いなと、家を出るのを躊躇わせる。 「無理しちゃダメだよ」 そんな俺の様子を見ていた冴島さんはそう優しく言ってくれたから、今日は行くのをやめておいた。 「でも俺、欠席日数が多いから卒業できないかもしれない」 「公欠届けだしたら出席にしてくれる制度って無い?」 「あ、確かあると思いますけど···」 「なら俺が診断書書いてあげるよ。それかいっそのことまた休学にした方がいい。一度退学して全部が終わってから大学に行き始めるのもいいと思うけどね」 「···志乃が喜ぶのはどっちですかね」 「間違いなく後者だね。君が危険な目に遭うことは少なくなるから」 真剣に学校をどうするか悩む。 結局学費を払っているのは自分だし、誰にも迷惑をかけることはないんじゃないかと思ったから。 「梓君?」 「···辞めようかな、もう。」 そんな大それた夢を持っているわけじゃない。 そもそも、今は夢なんて持っていない。 「君がいいならそうしてあげてよ。志乃は安心するだろうから」 「···でも、お金が勿体無い」 「俺はお金より君の命の方が大切だと思うよ。」 命が何よりも大切なのは知っている。 けれど踏ん切りはまだつかない。 「まあゆっくり考えて。君は好きに生きればいいよ」 「はい」 好きに生きること。それは実はすごく難しい。 頷いて返事はして見せたけれど、心の中ではそう感じている。 「とにかく、今日はゆっくり休もう。もう体も心も落ち着いてるかな?」 「多分、大丈夫です。」 「そっか。よかったよ」 冴島さんに笑顔を見せた。

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