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第127話 梓side

冴島さんと駄弁っていると嫌な報せが届いた。 慌てふためき泣き崩れる俺を冴島さんが支えてくれる。 「大丈夫だからね。すぐに行こう」 準備もそこそこに家を出て、眞宮組の組員さんが迎えに来てくれた車に乗り込んだ。 志乃が事故に遭ったらしい。 追突してきた車と共に犯人は逃走している。 志乃は意識不明の重体。肋骨に左腕の骨が折れていて、折れた肋骨が内臓を傷付けている。さらには腹部に刺傷があったらしい。 その志乃の容態を、やってきた病院で親父さんから聞いた。 手術中の赤い電灯は点灯されたまま。 数時間経って、電灯が消える。 手術室から痛々しい姿の志乃が運ばれてきて、近づいて声を掛けたけれど返事は無かった。 *** 「梓、少し寝ろ」 「···でも、志乃が···俺、志乃がいないと、嫌だ···」 手術が終わって病室に運ばれた志乃の隣で、椅子に座りながら志乃を眺めていた。 冴島さんは一度自宅に帰っていき、俺は志乃と一緒にいる。親父さんは俺に休むように言うけれど、そんなことしてられない。だって志乃から離れたくない。 「···志乃は今朝、夏目を連れて夏目の実家に話をつけに行った。その帰りに事故にあった。···いや、事故じゃねえな。これは確実に敵対する奴らが仕掛けた事だ。」 「···その、敵対してる奴らの、検討はついてるんですか?」 「ああ、大体はな。」 志乃の黒髪を親父さんが撫でる。 傷だらけの顔にはガーゼが貼られてあるし、頭には包帯が巻かれてる。 ドタドタと足音が聞こえてきて、病室のドアが開いた。そこには夏目さんが立っていて、志乃を見ると途端、固まってその場から動かなくなる。 「夏目、こっちに来い」 「···し、志乃さんは···」 「一命は取り留めた。きっとすぐに起きる。」 フラフラとこちらに寄ってきた夏目さん。 志乃の手を取って呟くように「ごめんなさい」と言った。 「俺が、いつまでもうだうだしてたから···」 「違う。全部は敵対する奴らのせいだ。俺たちは誰一人悪くない。」 「でもっ···」 何も出来なくてただ考えるだけしか能のない自分が嫌になるのはすごく分かる。 俺と夏目さんは同じだ。 志乃は必ず目を覚ますし、俺を迎えに来てくれる。黙って志乃を眺める俺を、夏目さんが見てきた。 「梓さんは、何で···何で平気なの···」 「···平気?俺が?」 「そうじゃないか!そうして、座ってるだけでっ!!」 「平気なわけ、ないでしょ。でもどうにも出来ない!」 夏目さんは俺に腹を立てる。何も出来ない自分を見ているようだから。俺と夏目さんは似ているから。 「夏目も梓も止めろ。」 親父さんの声に頷いて、眠っている志乃を眺める。早く起きてと願いながら。

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