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第132話 梓side
志乃に言われて、志乃の親父さんの家───眞宮組で約1ヶ月を過ごした。
皆が優しくて、一人暮らしをしていた時よりずっと優雅に暮らせた。
そしてこの生活の中で決めたことが一つある。
「梓」
退院した志乃が、優しく笑って俺の名前を呼ぶ。駆け寄って抱きつけば抱き締め返してくれて嬉しい。
今日は俺を迎えに来てくれた。だから今日から俺と志乃の二人暮らしがまた始まる。
「おかえり、志乃」
「ただいま」
左腕には未だギプスがあって、折れた骨はまだ完治していない。
俺がサポートしてあげないと。
「親父と話してくる。それからお前の一人暮らしの家はもう親父に返す。」
「うん」
「大学は───」
「今学期まで通わせてほしい。そしたら辞める。志乃と一緒に居たいから」
「···わかった。ならそうしろ」
決めたことは大学のこと。
ずっと悩んでいたけれど、やっと決意した。ただ辞めるなら辞めるでキリのいいときがいい。
「辞めてからはアルバイトでもしようかな。一人暮らしの時は結局できなかったし」
「駄目だ、するな。折角一緒にいれるんだろ」
「うん、そうだね。···あ!ていうかちゃんと夏目さんと話ついたの?」
「ついた。だから迎えに来た。帰ろう」
志乃は俺を連れて親父さんのところに行く。
親父さんは志乃の様子を見て安心したらしく、少しだけ仕事の話をしてから、俺のこれからのことを話し、二人の家に帰ることになった。
「お世話になりました」
「いいえ、また来てくださいね!」
一ヶ月の間に組員さんとは仲良くなった。することが無いからご飯を一緒に作ったりして、楽しい思い出だ。
速水さんが俺と志乃を家まで送ってくれる。
家に帰ったら何をしようかな、とワクワクしていた。
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