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第134話

*** 「志乃!遅れるから離して!」 「···うるせぇ」 「うるせえじゃない!本当に離して!」 「···俺の事が好きなら寝ろ」 「馬鹿じゃないの!?大学なんだってば!」 志乃と二人暮らしを初めて早一週間。驚く程に志乃は甘くなって、朝からこの調子だ。 「どうせタクシーで行くんだろ。」 「そうだけど、用意したいんだってば!ご飯食べたい!」 「飯作れねえだろお前」 「なら起きて作ってよ!俺のこと好きなんでしょ!?」 そう言うと渋々起きた志乃は俺をジト目で見てくるから、ムカついて思い切り頭突きをしてやった。 「痛てぇな」 「俺だって痛い!」 「何だよ怒ってんのか?」 「別に。お腹すいた」 「はいはい。ていうか食パンにチーズでも乗せて焼けばいいだろ」 志乃を起こさせてキッチンに連れて行く。 志乃に言われた通りのものを用意して、志乃と俺の前にご飯を置いた。 「いただきます」 「あ、俺今日ギプス取りに病院行ってくる」 「え、今日取れるの?」 「そろそろ取ってもいいだろ。」 「知らないけど···取れても無理しちゃダメだよ」 ご飯を急いで食べて、支度をする。 志乃は慌ただしい俺の様子を見て「落ち着けよ」と言うけど、誰のせいで慌ててると思ってるんだ。 「じゃあ行ってくるから!」 「帰り、連絡しろ。タイミングがあったら迎えに行く」 「やったあ。ありがとう」 急いで家を出て、大通りまで歩きタクシーを拾う。 そういえば、朝の甘い時間はあるけれど、もうずっと志乃とエッチしてないなぁと思いながら窓の外を流れる景色を眺めていた。

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