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第136話

志乃はその後、やらないといけないと言っていた仕事をしていた。邪魔しないように仕事をする志乃の背中を眺める。 「梓、悪い。珈琲入れて」 「うん」 珈琲を入れて出すと「ありがとう」と言ってくれる。志乃は本当、前よりずっと甘くなった。 「あ、立岡」 「電話?」 「ああ」 携帯を耳に当てて「どうした」と電話をしながら仕事を進める志乃。出来る人みたいで格好いい。 「あ?それなら早く帰ってこい。連絡した日から大分経ってるの気付いてねえのか?」 志乃が目を覚ました日に、志乃は立岡さんに連絡を入れていた。けれど未だ彼は日本に居ないらしい。 「撃たれた?お前なんかヘマしたのか」 撃たれたって言葉に海外は怖いなって身震いしたけど、そう言えば志乃も銃を使ったりしていた。そう考えたら別に怖くない。 「兎に角早く帰ってこい。じゃあな」 電話を切った志乃とパチっと目が合った。 「立岡さん、怪我したの?」 「みたいだな。けど生きてるから問題ないらしい。」 「そう」 問題ないの基準が俺とは全く違っていて難しい。 少し暇だなぁと思い始めた頃、志乃の書斎に入って本を読む。 前読んだ本のあるページがお気に入りで、そのページを探し見るとやっぱり面白い。 そのまま気がつけば時間が経っていたみたいで、コンコンとノック音が聞こえ振り返れば志乃が立っていた。 「もう晩飯の時間だぞ」 「嘘!ごめん!」 「いいよ。」 慌てて志乃とリビングに行けばご飯が出来ていて、全部志乃にやらせてしまったことに罪悪感が募る。 「梓?」 「ごめん、やっとギプス取れたところなのに、手伝わなくて···」 「はあ?そんな事どうでもいい。出来ることをしただけだ。冷めないうちに食おう」 「うん」 優しい志乃に促され、志乃の作った美味しい温かいご飯を食べた。

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