140 / 292

第140話

結局昨日は志乃は俺に触ることは無かった。 一緒にベッドに入ったけれど、俺のことを思ってか手は出さなくて、それが少し寂しかったってことは絶対に言わない。 「じゃあ、いってきます」 「頑張れよ。終わったら連絡しろ」 「うん」 大学まで送ってくれた志乃。 試験勉強はちゃんとしたし、昨日少し眠ってから起きた時もある程度覚えていたから多分、大丈夫。 送ってくれた車が行ったことを確認してから、試験を受ける教室に足を向ける。 今日は試験だから余計に学生の登校時間はズレているようで、あまり人がいない。 「梓」 「え?」 名前を呼ばれて振り返ると、何故かそこには槙村がいた。休学してるんじゃ?と思っていると「こっち来て」と手招きされて、また校門の方まで向かう。 「さっきの、眞宮志乃?」 「え···ぁ、う、うん」 「やっぱり本当だったんだね。眞宮志乃に監禁されてるって。今はもう外に出ることを許されたの?」 「そうだけど···ねえ、休学したんでしょ?どうしたの?大丈夫なの?」 槙村に問いかけると嬉しそうに口元が弧を描く。 「大丈夫。準備が整ったから」 「え?準備?何の──···」 ガンっと頭を硬い何かで殴られる。 そして意識が無くなった。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!