141 / 292
第141話 志乃side
「遅せぇ···」
梓を大学まで送ってから何時間経ったのだろうか。試験は午前には終わると言っていたのに、連絡はないまま午後の5時を回った。
友人達と話をしているのかと思ったが、あまりにも遅い。イライラして煙草を吸っているといつの間にか灰皿には吸殻が沢山あって、溜息を吐いた。
1度電話をしてみるか。
そう思い携帯をとって梓に電話をかける。
数回のコール音の後、相手が電話に出る音がした。
「梓?」
「············」
「今何処だ。迎えに行く」
「来なくていいですよ、眞宮志乃さん」
聞いたことのない声が俺の名前を言った。相手が梓では無いと理解した途端、怒りが沸き上がる。
「梓に代われ。殺すぞ」
「無理です。今梓は寝てるから」
「寝てる?余計なことしてんじゃねえだろうな」
嫌な想像が頭を巡り、ドスの聞いた声が出た。
「ただ殴って寝かせただけです。それ以外は何もしてませんよ。」
「殴った?···てめぇ、どういうつもりだ」
「どうもこうも、あんただってそうして梓を監禁したんでしょ」
梓は試験をちゃんと受けられたのだろうか。
攫われたことは勿論だが、昨日あれだけ頑張っていたのに、その努力を他人が無駄にしていたと考えると余計に腹が立つ。
「お前、俺が誰かわかっててこういうことしてんのか?」
「当たり前ですよ。眞宮組の若頭さん」
「今すぐ梓を返せ。」
「やっと俺の大切な人を捕まえれたのに、手放すわけが無いでしょう。それじゃあ、失礼します」
電話が切られて、すぐに親父と幹部達に連絡をした。GPS機能を使って梓を見つけろと。今の今まで電源がついていたのだから場所は特定出来る。今すぐに動けば梓をすぐに助け出せるはず。
「特定できた。幹部も向かわせる。お前を拾っていくから用意しとけ」
親父からすぐにそう連絡が来て、急いで準備をして、幹部達が来るのを待った。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!