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第142話 梓side

ズキズキと頭が痛い。目を開けると真っ暗な場所にいて、手足が動かせず、口も声が出せないように拘束されているのがわかる。 夜目が効いて辺りを見回すとどこかの部屋らしい。そして俺はベッドに寝かされている。 何が起こったんだっけ。 朝、志乃と別れて、見計らったようにやって来た槙村。 その槙村に硬い何かで殴られて、気を失った。 準備が整ったからと言っていたけれど、何のだろう。 殴られた頭が痛くて考えるのが難しい。 痛みを紛らすように息を吐くと、部屋のドアが開いた。 向こう側の電気が部屋に入り込む。目を凝らすと逆光になりながらも槙村の笑った顔が薄らと見えた。 「梓、起きたんだね」 「·········」 「ごめんね、殴ったりして。一応手当はしたんだけどまだ痛む?」 「············」 俺を話せないようにしているのを、忘れているのだろうか。睨み付けると「ああ、そうだった」と言って、部屋の電気が点いた。 突然明るくなったから目が痛くてギュッと閉じる。暫くしてゆっくり、目を開けると部屋の有様に怖くなった。 「この部屋、いいでしょ。俺のお気に入りなんだ」 「っ!」 部屋の壁一面に俺の写真が貼られてある。 槙村が固まる俺の背後に回り、話せるように口に巻かれてあった布を取り去った。 「梓?」 「き、気持ち悪い···何で、何でこんな···」 「梓の事が大切なんだよ。眞宮志乃に監禁されたって聞いたから、急いで手筈を進めたんだ。俺は大学に入ってすぐの頃に梓に一目惚れしたんだよ。···ねえ、俺との会話を覚えてる?」 思い出せないのと、未だこの部屋にショックを受けていて返事ができない。いつの間にこんな写真を撮られていたんだろう。全く気付かなかった。 「皆に好かれてる槙村っていいねって言ったんだよ。覚えてない?」

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