146 / 292

第146話

「ただいまぁ。時差ボケで死にそうな立岡が帰ってきましたよー」 そう言ってずかずかと部屋に入ってきた立岡。 そんなことはどうでもいいから早く調べてくれと言おうとした時「調べたよ」と先に言われて口を閉じた。 「とりあえず···あ、これ。はい」 「···何だこれ」 「お土産。で、こっちがお前の今一番欲しいやつね」 そう言って渡されたのは槙村の情報が書かれた紙。さすが、仕事が早い。 立岡はパソコンを起動させながら、槙村について説明してくれる。 「その子自身は厄介じゃないよ。でも何でその子が梓君を攫うんだろうね。」 「···やっぱりこいつだったのか」 「みたいだよ。いろんな所の監視カメラをハッキングしてみたら、その子が梓君を運んでるのが映ってた。でも残念なのはその子の家で梓君を隠してるわけじゃ無いだろうなってこと。志乃相手にそんな事をしたらすぐにバレるのは、どれだけ馬鹿でも分かるだろうし。」 なら何処だ。考えていると立岡がパソコンを弄りながらクスクスと笑う。 「その子が休学した時期は丁度お前が梓君を監禁し出した時期だ。」 「それがどうかしたのか」 「んー···待って。えっとねぇ···わあ、その頃からこの子凄い働いてる。」 口を挟んで作業を中断させるのは効率が悪い。そう思ってしばらく待っていると、立岡が大きな声で笑い出して驚いた。 「家借りてるよ!凄いっ!多分ここで梓君を隠してるんじゃないかなぁ。」 場所が特定できたなら、今すぐ迎えに行こうと腰を上げる。 それと同時に、立岡が「待て」と言って集中しだした。 「あ、ダメだ。さっきの言葉訂正する。この子は少し厄介だ。」 「どういう事だ」 「やってたバイトがね、薬物の仲介人とか、運び屋とか。それも俺たちと仲が宜しくない組のね。んー···今彼の携帯ハッキングしてるんだけど···大分仲良いよ、今回の梓君を攫う事にも協力してくれてるみたい。下手に動かない方がいいよ」 「梓を餌にして俺が出ていけば、そこを狙って来る奴らがいるかもしれねえってか?···それなら、さっきこの携帯をとってきた時点でそうするだろ。」 「さあ?騙されて悔しがってる志乃が見たかったんじゃないの?馬鹿の趣味はわかんないよ」 そう言って煙草吸い出した立岡は「梓君、何もされてなければいいけどね」と言う。 早く助けてやりたいのに、こういう時に邪魔をしてくる自分の立場が嫌になった。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!