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第154話 梓side
「お久しぶりです。梓さん」
「わっ、あ、え···夏目さん···」
志乃とリビングにいるとインターホンが鳴って、志乃に言われ玄関を開ければ夏目さんがいた。驚いて吃る俺に、夏目さんは柔らかく笑いかける。
「志乃さんに呼ばれてきました。」
「ど、どうぞ···上がってください」
「ありがとうございます」
心臓がバクバクする。何で志乃は夏目さんを呼んだんだ。
「志乃さん、お疲れ様です」
夏目さんを連れてリビングに行くと志乃が何でもないように煙草を吸っていて腹が立つ。
「おう。今日は頼んだぞ」
「はい」
二人だけ話が通じてて余計に。
「梓、今日は夏目と居ろ」
「···うん」
「じゃあ俺そろそろ行くから。」
「志乃!」
立ち上がった志乃に近づいて抱き着く。ふんわりと匂う志乃の匂いと煙草の匂い。
「ん?」
「キスして。そしたら行ってもいい」
「お前の許可が必要なの?」
「必要なの!」
そう言うと志乃は俺の後頭部に手を回してキスをしてくれる。離れていったそれを追いかけたくなるけど、我慢。
「じゃあな」
「···行ってらっしゃい」
玄関まで夏目さんと一緒に志乃を見送る。
夏目さんと二人きりということに、酷く緊張していた。
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