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第156話
結局、夏目さんと出かけることになった。
今日は寒いと夏目さんに聞いたので少し厚着して外に出る。冷たい風が頬に当たって咄嗟に両手で温めた。
「寒っ!」
「車で行きましょ」
「はい」
夏目さんが運転する車に乗り込んだ。
シートベルトを締めると車は走り出す。
「甘いもの巡りって楽しいですよねぇ。梓さんはどんなのが好きですか?」
「俺は···カスタードクリームとか好きだから、パイとか···」
「俺もパイ好きー!」
気分良さげに車を運転する夏目さん。俺は前を向いてどこに行くんだろうと考える。
「ここです!ここ!」
「何かテレビで見たことあるかも!」
「結構テレビに出てるんですよねぇ。ほら、ケーキもプリンも有名だって!」
俺はどうやら夏目さんを誤解していたらしい。あんな事があったから、嫌な部分しか見えていなかったけど、普段の夏目さんは優しい。
「プリン食べたい···」
貰ったままのカードを出して買おうとすると「俺が払うから!」と夏目さんに止められる。
「え、でも···」
「いいから!ね?」
「···ありがとうございます」
結局夏目さんに買ってもらい、その後も三件の店を回って、家に着いた頃には両手にたくさんのお菓子を持っていた。
***
「あの···聞いてもいいですか?」
「何ですか?」
甘いものを食べながら、ダラダラと過ごす。
それでも気になっていたことがあって、今やっと口に出せる。
「志乃の今日の仕事って···槙村が関係してるんですか?」
「んー···多分、あんまり話しちゃいけないことなんです。だから···秘密ですよ。」
「はい」
「俺が志乃さんから聞いた話は、梓さんを保護したあと、槙村は良からぬ事を考えていたらしくて、仲のいい···眞宮組とは敵対関係の組に今まで以上の協力を求めたんです。」
「ま、待って!槙村って極道なんですか!?」
「いや、彼はバイトで少し関わってた程度です。完全に白の人間ではないけれど、こちら側に浸っていたわけでもないです。」
少し難しい。とりあえず白でも黒でも無さそうだから、グレーと思っていよう。
「だから、槙村がこれ以上下手な事を起こさないように、今話しに行ってます」
「話、だけ?」
「···まあ、一応は」
視線をそらした夏目さんにそうではないと理解した。多分痛いこともしてるんだろう。志乃から与えられる痛いことなんて、きっと声も出せないくらいだろうから少しだけ、同情した。
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