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第158話
倒れた槙村を相馬が抱え、そのままワゴン車に積んで処理をする。俺は本家に1度戻る。
「若、少しいいですか」
「何だ」
廊下を歩いていると速水に会い、止められる。
「西村さんって子にお礼、何したらいいですか?俺あんまり女の子のことわからんでして」
「金でいいだろ。一本か二本」
「女の子ってそんなもんですか?」
「さあ。そういうことは立岡に聞けばいい。情報持ってるから」
「立岡に聞くの嫌なんですよね。だって怪我したから世話しろってうるさいんですもん。」
怪我って外国に言ってた時のやつか。詳しく内容は聞いていないので何があったかは知らない。
「でも普通に動いてただろ」
「かまってほしいタイプだから」
「···いつまでも変わんねえな」
「困ってるんでどうにかしてください」
本当に困っているようで、その表情は歪んでる。
「じゃあもう、一本渡してきますね」
「頼む」
速水と別れ、自室に向かった。
***
自室に入り、煙草を吸いながら放ったままだった仕事をした。
一時間程経つと速水がやって来て「臭っ!」と言い窓を開け出した。
「換気して下さい。煙草臭すぎ!」
「···何の用だ」
「お礼渡してきました。全然受け取ってくれなかったから無理矢理ですけど」
「無理矢理か。」
「無理矢理です」
笑ってそう言った速水。けれど無理矢理でも受け取ってもらえたのならいいか。
「癌になりますよ」
「梓の前ではそんなに吸ってない」
「梓君の前だけじゃダメです。」
「うるせえな。さっさと仕事してこい」
報告を済ませ部屋から出て行った速水。俺は止めていた作業を再開したのだった。
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