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第159話
「違いますよ、それはこうして···」
「こう?ぁ、指切れた···」
「あー!!」
家に帰りリビングに行くと二人の姿は見えないのに騒がしい。キッチンに行けば梓が指から血を出していて、夏目が応急処置をしている。
「あ、志乃」
「えっ!あ、お疲れ様です!」
梓と目が合って、何でもないように名前を呼ばれる。その後に夏目に挨拶をされ「ああ」と返事をした。
「絆創膏ありますか?」
「多分···待ってろ」
リビングで絆創膏を探し、見つけた一枚を持ってキッチンに行く。
「はい」
「ありがとうございます!」
夏目が梓の指に絆創膏を巻く。
梓は夏目に礼を言って、それから「おかえり」と俺に笑いかける。
「ただいま。···料理作ってたのか」
「うん。教えてもらってた」
「で、指を切った?」
「···次からはもう切らない」
夏目に「続きしましょ!」と話しかける梓を見て、二人が仲直りできたのだと知る。
「志乃!お腹すいたなら机の上にあるの食べていいから!」
「ん」
「志乃さん、珈琲でもいれましょうか?」
「いや、風呂に入ってくる」
もしかしたら血の匂いが混じっているかもしれない。血の匂いは好きではないから早く匂いを落としたい。
「わかりました!」
「早く出てきてよ。もうちょっとでご飯できるから!」
「ああ」
早くしねえと梓の機嫌が悪くなったら面倒だなと、いつもより短い時間で風呂に入った。
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