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第160話
風呂から上がるとテーブルに並べられてあった料理。それはどれも美味しそうで本当に梓が作っていたのかと思う程。
「つまみ食いしちゃだめだよ!」
「しねえよ」
キッチンから出てきた梓にそう言われ、ソファーに座ってテレビを見る。
少しすると「出来たからこっちきて」と梓に腕を引いて連れて行かれ、テーブルの席につく。
「ビール取ってきてもいいか」
「俺が取ってくる!夏目さんも座ってて!」
バタバタと忙しい梓を見て夏目が笑う。
「今日はずっと動いてますよ、梓さん。外にも行ったし、料理もして」
「ちょっとは立ち直れてると思うか」
「はい。俺にはそう見えます」
また走ってこちらに来る梓を、夏目は優しい目で見る。それはどこか兄貴の様な視線だ。
「梓」
「ん?何?」
「お前、料理できるようになったんだな」
「もしかして馬鹿にしてる?物は切れるし、卵だって割れるから」
「物ってのはてめぇの指か?」
「···嫌い!」
ドン、と音を立ててビールが置かれる。
嫌いなんて言うから、その腕を引き寄せ、隣に座らせた。
どうやら俺を嫌いと言えるほどの元気は戻ってきたらしい。
「何!」
「···ちょっとは元気出たみたいでよかった」
「···別に」
梓は俺の顔を見て「志乃はわかりずらくて困る」と文句を垂れた。
「何が」
「言わない!いただきます!」
手を合わせて箸を持った梓。俺はそんな梓に安心した。
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