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第161話 梓side
夏目さんが帰っていって、俺は志乃と二人きりに。
「今日は甘いもの巡りに行ったんだ」
「へえ。良かったな」
「凄く美味しかったんだよ。志乃もいる?」
「いや、いい」
志乃が煙草を吸おうとして、けれどすぐに手が止まる。どうしたんだろう。
「吸わないの?」
「···吸いてぇ···けど、やめた方がいいって」
「誰が?俺、志乃が煙草吸ってるところ格好良くて好きなのに」
「なら吸う」
止めていた手を動かし煙草を吸い始める。志乃ってそういう所は意外と単純。
「お風呂入ってくる」
「ああ」
「先に寝ないで」
「いつもそうだろ」
煙草を灰皿に置いた志乃は、ぐいっと伸びをしていて、疲れてるみたいだ。小さく溜息を吐いた唇に釘付けになって、どうやら俺も疲れてるみたい。
「志乃」
「何だよ」
「···キスしたい。していい?」
そう聞くと志乃が立ち上がって俺のそばに歩いてくる。かと思えば背中を屈め、俺の後頭部に手を回して引き寄せた。
「そんなこと、聞かなくてもいい」
「んっ」
唇からじんわりと広がる熱が心地いい。目を閉じて、志乃の首に腕を回し抱き着く。
「ベッドで待ってる。早く来い」
「···うん」
そう言って首筋にキスを落とされて、もしかしなくてもセックスをするんじゃないかって期待して、俺は急いでお風呂に入った。
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