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第167話
「あ、やべえ···」
仕事をひと通り終えたあと、やり忘れていたことを思い出した。しかも必要なものは全て本家に置いてきてしまっている。
今は幹部の誰が本家にいるだろう。一人一人電話をかけていくのは面倒で、本家に電話をかけた。
「はい」
「俺だ」
「俺?俺って誰だ。まさかうちに詐欺か?」
今日の電話番はとてつもなく馬鹿らしい。面倒臭くて溜息を吐くとそれが聞こえたのか、相手は怒り出す。
「幹部と代われ。誰でもいい」
「幹部と代われだぁ!?てめぇどの立場でそんなこと──···」
「眞宮志乃だ。眞宮組の若頭。わかるか?馬鹿が」
「しっ、志乃さんっっ!!?」
やっと伝わったらしい。頭を抱えていると「すみません」と何度も謝ってくる。別にどうとも思ってないから、とりあえず早く幹部に変わってほしい。
「早く代われ」
「ひぃぃっ!はい!!あ!丁度いい所に!神崎さん!若です!」
すぐに神崎が電話に出て「お疲れ様です」と言う。
「今幹部は誰がいる」
「相馬と俺だけです。」
「どっちでもいいから、俺の家に部屋に置いてある資料をまとめて持ってきて欲しい」
「資料だけでいいですか?」
「あー···引き出しのとこにUSBがあるからそれも。」
「わかりました」
電話を切り、煙草を吸う。
梓はまだ眠っていて、いつの間にかDVDも終わりメニュー画面に切り替わっていた。
テレビを消して梓に毛布を掛ける。一緒に眠りたいという欲も出たが、神崎か相馬が来てくれるはずだから起きていないと。
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