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第171話
大晦日が近づくにつれて、家に来る人が増えてきた。仕事に復帰した夏目さんは勿論、速水さんに相馬さん、神崎さんに、親父さんと志乃のお母さんの愛美さんまで。
「おい!汚すな!」
「いいじゃないたまには。あんたの家に来るのは久しぶりなんだから」
「呼びたくないんだって!いつも汚して帰るだろ!」
「はあ!?ちょっと聞いた!?」
「二人ともうるせえ。」
志乃と愛美さんが言い合いをして、それを親父さんが呆れた様子でそう言う。
「あの、お茶入れます」
「いいよ。お前は座ってろ。おい志乃」
「今ババアの汚したとこ片付けてるんだよ!」
「誰がババアだクソガキィ!!」
愛美さんって、あんな感じだったっけ?オロオロしてると親父さんが二人に近づき、志乃の頭を叩いた。
「うるせえんだよ」
「親父の女だろ!?こんなんでいいのかよ!」
「いいから結婚したんだろうが。馬鹿かお前は」
親子で言い合える関係が羨ましい。
志乃が少し拗ねたような表情になって、両親から離れ俺を抱きしめてそのまま椅子に座る。
「お茶入れてくる」
「俺を一人にする気か。」
「じゃあ志乃も行こ。」
仕方なくという様子で立ち上がり、キッチンに来た俺達。けれど志乃は一向に俺から離れてくれなくて、はっきりと言えば邪魔だ。
「離れてよー!」
「動けるだろうが」
「何なのもう!ご両親来てるんでしょうが!ちゃんとしなよ」
「いつもこんな感じだからいい。今年はお前がいるからはしゃいでるんだよ」
「ふふっ、それは嬉しいなぁ」
お茶を入れて、リビングに持って行く。親父さんと愛美さんはソファーに座って、二人で話をしていた。
「おい、梓が茶入れた」
「あら、梓くん!ありがとう!」
「いえ」
志乃はやっぱり自分の息子だから、ああやって素が出せるんだと思う。
「今年の大晦日は梓も来るんだろ。楽しくなるな」
「そうねぇ。梓くんは苦手な食べ物はある?」
「え、えっと···何でも食べれます」
「そう!なら張り切って沢山ご飯作りましょ!志乃、あんたも手伝いなさいよ」
「嫌だね。さっさと帰れ」
相変わらず志乃は俺にくっついている。恥ずかしくて離れようとしたら、お腹に回されている腕の力が一層強くなった。
「お前は離れるな」
「···志乃って恥ずかしいって感情知ってる?」
「さあな」
呆れて溜息を吐くと、手で口を塞がれる。睨みつければふっと笑った志乃が、少し恨めしく思った。
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