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第175話
***
年があけてから少し経った。
初詣に行きたいという俺の要望を志乃は叶えてくれて、護衛はついたけれど、ちゃんと二人行くことが出来た。
「梓、飯できたから座れ」
「はーい」
しばらくは仕事は無いらしくて家にいる志乃に甘えっきりの生活。
ご飯も作ってもらって、ただのヒモになってしまった。
「俺バイトでもしようかな」
「は?何で。金が足んねえのか?」
「違う違う!ずっと志乃に面倒見てもらって生きるのはどうかと思って···」
「そんなの気にしなくていい。」
「気にするでしょ。」
何もしていない俺が今野垂れ死んでないのは志乃が沢山働いているから。俺もそれを真似するべきだと思う。
「働く!」
「許可しない。早く食え」
「許可して!いたたきます!」
「無理だ。お前は何のために大学辞めたんだよ。よく考えろ。···おい、そんなに急いで食べるな」
志乃の言葉を無視してご飯を食べていると「おい!」と言われて顔を上げた。
「ゆっくり食え。」
「···何怒ってるの」
「お前がふざけた事を言ってるからだろ。」
舌打ちをした志乃が、席を立ってキッチンに煙草を吸いに行った。俺は志乃のいうことなんて聞かずに急いでご飯を食べて、携帯でバイトを調べる。
「時給···高いと嬉しいな···」
じっと携帯を見ているとひょいっとそれが奪い取られる。上を向くと志乃が怒った顔で携帯を見ていて、電源を切ってそのまま返してくれない。そもそも俺は携帯を貰っている身だから、なんとも言えないのだけれど。
「あの···?」
「いい加減にしねえと怒るぞ」
「···そんなに駄目なの?志乃には迷惑かけないよ」
「そういう問題じゃねえんだよ。お前が眞宮組と繋がっていることは、槇村の件で色んなところに知られてんだ。そんな中バイトなんてして何かあったらどうする。」
「それは···」
「頼むから何もするな。金の事も俺の負担も、何も心配しなくていいから」
志乃の目は懇願するようなそれになっている。俺は思わず頷いてしまって、志乃はそれを満足そうに見ていた。
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