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第177話

「立岡はお前がいいなら帰らせていい。」 「わかった。ごめんね下らないことで電話して」 「別にいい、気にするな。···それより立岡の言うことはあまり真に受けるなよ。疲れるだけだから。」 「···うん。何時に帰ってくるの?」 「夕方までには帰るよ。何かいる物あるか?」 何もいらないから、早く帰ってきて欲しい。この前は志乃にアルバイトしたいって言ったけど、本当はずっと志乃と一緒にいたい。 「···何もいらないから、早く帰ってきて。」 「何だお前、今日はやけに素直だな」 「そういう気分なの。早く仕事終わらせて」 「はいはい。じゃあ切るぞ」 「あっ!志乃!」 「あ?」 早く会いたくて、帰ってきて欲しくて、その言葉は自然と出た。 「大好きだよ」 「···俺もだ。いい子にして待ってろ」 「うん」 目の前にいたら抱きつきたい。それからキスをして、沢山好きって伝えたい。 電話を切って、リビングに戻る。 立岡さんには帰ってもいいことを伝えると、大袈裟だなと思う程喜んで、すぐに帰っていった。 「···あの人って本当···」 別にいてほしかったわけじゃない、だって気まずいし。けどあれだけ喜ばれたら少し悲しい。 「···夏目さんは優しいのに」 気分転換に何かを食べようと思い、冷蔵庫を開けた。

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