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第178話 志乃side

家に帰ると明らかに梓が怒っていた。ソファーにだらしなく座り、アイスを食べている。 「ただいま」 「···おかえり」 その理由は分かっている。夕方頃には帰れると言っておきながら、今はもう夜の7時前。 飯は作ってくれたらしく、テーブルの上には本当にあの不器用な梓が作ったのかと思うくらい、美味しそうな料理が並べられていた。 「お前が作ったの」 「···作った。おかげですごく怪我した」 「無理しなくてよかったのに。···ありがとな」 「···うん。志乃、こっち来て」 言われた通り、梓の隣に行くと擦り寄ってきたと思えば抱きつかれて、俺も抱きしめ返す。 「悪かったな。」 「···俺やっぱり、一人でいるの嫌だ。志乃といたい。それか···立岡さんじゃない人」 「考えるよ」 梓にとって一番いい方法を考えて、できるならそれを実行してやりたい。 梓の額にキスをする。それから鼻に、唇に。 「明日は?」 「明日は本家に行く。とりあえずお前も来るか?」 「行く。朝から行くの?」 「いや、昼から。どうかしたのか」 ぐりぐりと梓が俺の胸に顔を押し付けてくる。少し痛くて、顔をあげさせると、ほんのりと赤く染まった頬が見えた。 「···エッチしよ。俺、今日我慢したよ」 「···そうだな。でも先に飯な」 もう一度唇にキスをすれば、嬉しそうに目を細めてこくりと頷いた。

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