182 / 292
第182話
そして浅羽組との会合の日がやってきて、梓は俺の部屋に居させて、俺はしっかりとスーツを着ていて、堅苦しい感じが苦手だ。
「スーツ格好いい」
「···ならいいか」
「え?何が?」
「何でもない」
ネクタイを引っ張られ、背中を屈める。
「どうした?」
「キスする。格好いいから」
そう言ってキスをされ、可愛いなと梓の髪を撫でた。
「そろそろ来られる筈だ。出迎えに行ってくる。お前はここにいること。何かあれば夏目に連絡してくれ。」
「わかった。頑張ってね」
「ああ」
梓から離れ、門まで向かう。
そこには既に親父と幹部、それに組員がいて、整列し、待っている。
「お越しになりました。」
門が開き、車が二台入ってきた。
停車し、ドアを開けて出てきたのは浅羽組の頭。そしてその息子の若頭。二人とも揃って顔が整っている。
「ご無沙汰しております。」
頭を下げた親父についで、俺も頭を下げる。
流石と言うべきか、浅羽さんも、若頭も、堂々としていて、人の上に立つ器を持っている人だと一目見ればわかる。
「眞宮さん、今日はそんな固い場じゃねえから、そんなに気張らなくてもいいですよ。近況報告みたいなもんだ。最近色々あったと聞いてますからね。」
「はい。中でお話します。どうぞ」
浅羽さんを中に通して、広間に移動する。
「あの」
「はい」
移動の途中、声をかけられて振り返れば浅羽の若頭である晴臣 さんがいた。
「殆ど初めまして、だよな?」
「はい。眞宮志乃です。」
「浅羽晴臣です。仕事の時は仕方ないけど、普段はハルって呼んでくれていいから。それに敬語もいらないし。」
「わかりました」
頷けば満足そうに晴臣さんも頷き返してくれた。
「今日話し合いする内容を知らねえんだけど、知ってるか?」
「いえ、俺は何も聞いてません。」
「ふぅーん。なら俺達は別に参加しなくていいのかもしんねえな。···そう言えば志乃の恋人って男って噂、本当か?」
突然恋人の話題になった。こくりと頷きながら「はい」と返事をすれば、綺麗な顔が小さく笑った。
「そうか。俺の恋人も男なんだ。一緒に住んでるのか?」
「はい。俺の恋人は従兄弟で、行方不明だったのが最近見つかって、それからなんです」
「もしかして親父たちはそれを話すのかもな。それ関係でいざこざがあったんだろう?お前もやられたって」
「···まあ、はい。」
そんな会話をしていると広間に着いて、座布団を敷いた床にそっと腰を下ろした。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!