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第183話
***
「大変だったな。けじめはどう付けるんだ」
「はい。向こうのことは調べあげていつでも行ける状態なんですが、うちの甥が志乃がまた怪我をするかもしれないとなると、今度こそ壊れる気がしまして、なかなか踏み出せないんです。」
夏目との関係のうちの一つに終止符を打ったあの日のことを話すと、相手にはどう報復するつもりなのかと聞いてくる浅羽さん。
確かに、俺達はいつでも動ける準備をしているが、踏み出せないのは堅気である梓を、そのせいで壊さないためだ。
「虐待された挙句、記憶をなくして施設に入れられたんだっけか。」
「はい。今は記憶を取り戻していて···それはいい事なんですが、トラウマも増えてしまって」
「──···あの」
晴臣さんが親父達の会話に入っていく。その様子を傍観していると、その目が俺を捉えた。
「その人に会わせてもらえませんか」
「えっ」
そんなことを言われると思ってなくて、驚いて思わず声が出た。けれどすぐにここで梓を晴臣さんに会わせる事がいい事なのかを考える。
「···結構な人見知りだと思うので、ちゃんと話すかわかりませんが、それでもいいなら···」
あまり話させたくないという思いを抑えて、俺がそう言うと、親父も一度頷く。
「構いません。お願いします」
「なら連れてきます」
「いや、俺が行く。この話し合いに参加するのは人見知りには辛いだろうから。」
その言葉を聞いて、確かにそうだなと思い、晴臣さんを連れて俺の部屋に移動する。
「名前はなんて言うんだ?」
「佐倉梓です。」
俺が話す訳では無いのに、何故かやけに緊張する。
ただ梓がこの人を怖がらず、負担にならなければいいなと思った。
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