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第186話 梓side

ハル君の恋人が男だってことに驚いた。 それに、志乃が俺のことをそこまで考えていてくれたこととか、今のたった少しの時間で疲れてしまって、志乃に凭れ掛かる。 「どうした?」 「んー···なんか疲れた。···あ、そう言えば二人ともここにいていいの?親父さん達との話し合いは?」 思い出してそう言えば、ハル君が「まあ、何かあったら呼びに来るだろ」と人懐こい笑顔を見せる。 「じゃあいいか···」 「梓ってさ、人見知りなのか?」 「え···あ、うん。まあ、割と」 初めて話すとなると少し緊張する。 だからハル君と話すのも、初めは緊張していたんだけど、何でか今は何も感じない。 「俺はあんまりそう感じなかったんだけど。何で?」 「えー···多分、ハル君は話しやすいからだと思う。話題振ってくれるし」 「成程。それなら陽和も大丈夫かもしんねえな。」 「陽和さん···は、恋人さん?」 「ああ」 「どんな人?」 気になって聞くと、志乃は俺の言葉に困ったような顔をしている。もしかして、あまりハル君相手に色んなことを聞くのはいけないことなのかもしれない。けれど、ハル君は優しく笑う。 「芯があって強い。俺が出来ないことをするから、すごいって思う。」 「ハル君ができないことって何?だって、志乃は何でもできるよ。ハル君は志乃より上の立場なんでしょ?」 「梓、やめろ。」 「別にいいって。強いて言うなら”優しくなる事”。さっき梓は志乃のことを優しいって言ってた。俺もそう思う。けど俺の立場は優しいだけじゃダメなんだ。浅羽組は東で一番、そこの若頭はまだ年の若い俺で、だからって舐めてる奴もいる。」 ハル君の言葉に納得して、二度ほど頷く。 「だからって志乃の立場を下に見てるわけじゃない。同じ若頭として、志乃は出来るやつだしな」 「そうなんだ。···皆、大変なんだね」 「まあ、そんな志乃を支えるお前も大変だけどな!」 笑ってそういうハル君に思わず苦笑が漏れる。 「さぁて、そろそろ戻るかなぁ。」 「はい。梓、悪いがここにいろ」 「うん。」 ハル君と一緒に志乃が出ていく。 笑顔で手を振って、ドアが閉まるのを見届け、深く息を吐いた。

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