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第192話

朝起きると、志乃はもう既に居なかった。違和感の残る体でリビングまで行くと、テーブルの上にはご飯があった。書き置きの手紙も一緒に。 「ちゃんと食べること···お母さんみたい」 本当のお母さんのことは殆ど覚えていないけれど。 志乃の用意してくれたご飯を食べて、お皿を洗う。 ソファーに座ってテレビを見ながら、今日は何をしていようかと考えていると、携帯が軽快な音を立てる。画面を見ると志乃からの着信で「はい」と電話に出た。 「起きたか」 「うん。ご飯ありがとう」 「ちゃんと食べたか?体はどうだ」 「食べたよ。体も大丈夫。ちょっと違和感があるけどね」 「なら良い。···晴臣さんから連絡があった。俺が出ている間、不安なら浅羽に来てくれて構わないって。ついでに恋人も紹介できるしって」 突然の展開に数秒考えた。志乃はもう戦いに行ってしまうのだろうか。もしそうなら、一人で待っているのは嫌だし、一番早く正確な情報が集まりそうな浅羽組さんにいさせてもらった方がいいのだろう。 「志乃はもう、行くの?今日、戦うの」 「······まだ、決まってない。けどその可能性は高いな。」 「···なら行く。」 「わかった。晴臣さんに連絡する。」 もし今日戦うって知ってたなら、昨日はもっと志乃にくっついていたのに。 あれ以上エッチするのは無理だけど、ずっと抱きついていたのに。 後悔していると知らない番号から電話がかかってきて、少し疑いながら「はい?」と電話に出た。 「あ、梓か?俺だ、晴臣」 「ハル君かぁ···あ、志乃から連絡来た?」 「ああ。だから電話した。今から迎え寄越すから。玄関先で名前を言わせる。黒沼(くろぬま) (みこと)が来たら、そいつがうちのだ。あと赤髪の鳥居(とりい) (ゆう)。」 「黒沼さんと、鳥居さんね。」 「おう。悪いが俺はちょっとやることがあるから、迎えに行けない。お前が来るまでに終わらせる。」 「大丈夫。ありがとう」 初めて会う人と、いきなり車の中っていう狭い空間に一緒にいるのはすごく緊張するけど、志乃のことを少しでも早く知るためだ、仕方が無い。 「何も持ってこなくていいからな。むしろ持ってくるなよ。じゃあな」 「え、うん」 電話が切れて、用意しようと腰を上げた。

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