193 / 292

第193話

用意もできて少し休んでいるとインターホンが鳴った。モニターを見てみると黒髪の人と赤髪の人が映っている。二人とも驚くほど顔が整っていて、格好いい。 通話ボタンを押して「はい」と言えば「黒沼命です」と低い落ち着く声で言われた。 「あ、はい、えっと···すぐ出ます!」 「ゆっくりで大丈夫です。お待ちしてます」 「はい!」 通話を切って荷物を持ち、鍵を閉める。 外に出るとさっきの人達がいて、俺を見ると軽く頭を下げてきた。どうやら俺の顔は知っていたらしい。 「黒沼です。こっちは鳥居」 「鳥居ですー!」 「あ、お、俺は···佐倉梓、です」 「梓さん、車乗ってください。何かあった時のために鳥居も後部席に乗せます。」 その意味があまりわからなくて首を傾げると、殆ど無表情だった黒沼さんが、小さく笑う。 「どうぞ」 「あ、ありがとうございます···」 黒沼さんも鳥居さんも、きっと年上なのに敬語を使うから余計に緊張する。 「眞宮組の若頭さんの恋人なんですってねえ。俺、あの人はいつも難しそうな顔してるから色恋沙汰とか興味無いと思ってました!」 車に乗り発車すると、隣に座っていた鳥居さんが、唐突にそう言ってきた。驚いたけれど、鳥居さんの言うことは少し納得がいってコクコクと頷く。 「確かに、志乃はあんまり興味無さそう···」 「それ梓さんが言っちゃいますぅ?なんか梓さん面白い」 「こら鳥居、失礼なことを言うな」 「はーい」 「あ、ぜ、全然大丈夫です!」 「やったあ!ならいっぱい聞いちゃおー。あ、ちなみに命さんは浅羽組の幹部、俺は幹部補佐ですー。」 幹部ってことは夏目さん達と同じ立場。その補佐だから、鳥居さんは命さんの部下に当たるんだろう。 「着きました。鳥居が若のところに案内します」 「ありがとうございます」 しばらく話していると大きな建物について、車から降りるとそこに居た厳つい人たちが命さんと鳥居さんを見て頭を下げるから、俺がそうされているわけでもないのにドキドキした。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!