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第194話

「若ぁ、鳥居です、失礼しまーす」 そう言ってとある部屋のドアを開けた鳥居さん。中に入って行く鳥居さんに続いて俺も中に入ると、眠るハル君と、そんなハル君に膝枕をしている綺麗な人がいた。 「ハル、鳥居さん···と?」 「佐倉梓です」 「梓···?あ!ハルが話してた人だ!」 いきなり立ち上がったその人のお陰で、ハル君は床に落ちて、鈍い音を立てている。 「っわ!え、えっ!」 「初めまして!白石(しらいし) 陽和(ひより)です!」 「陽和さん···よろしくお願いします」 「陽和でいいよ、俺は梓くんって呼ばせてもらっていい?」 「ぁ、うん」 床から起き上がったハル君は鋭い目で陽和君を見ている。 「陽和···」 「あ、起きた?梓君来たよ」 「起きた?じゃねえよ。頭はぶつけるしよ···。梓、おはよう」 「寝るなって言ったのに寝たのがダメなんでしょ。梓君何か食べる?」 首を横に振ると「こっち座って!」と言って俺の腕を引っ張るから、言われたとおりそこに腰を下ろす。 「まさか今日来てくれるとは思わなかったよ!ハルは教えてくれなかったし!···もしかして家で一人だった?あー!でも嬉しい!梓君が来てくれて!」 「う、うん、」 「陽和落ち着けよ、梓が困ってるだろ。」 俺の前にハル君が立って、陽和君から隠す。 「眞宮組のことは昨日説明した。今日ここにいる意味はわかるだろ。今日抗争が行われるのは殆ど確定してる。」 「···ごめん」 「梓、ここなら眞宮の情報が逐一入ってくる。どこよりも正確だし、早い。いつでもお前に伝えられるようにするつもりだから、今は何も気にせずにいろ」 「···俺、今、多分···落ち着いてるんだけど、怖い」 「ああ。」 ハル君が俺の前に座り込む。 志乃とは違う、けれど力のありそうな手に触れると温かくて少し安心した。 「志乃、無事に帰ってくるかな」 「帰ってくる。お前がいるからな」 「ハル君もそう?陽和君がいるから帰ってくる?」 「そうだ。」 ふっと柔らかく笑ったハル君。今の笑い方、少しだけ志乃に似てた。 「親父のところに行こうか。それが済んだら好きなようにしてて構わないから」 「うん」 立ち上がって、陽和君に笑いかける。陽和君は少し困ったように笑っていて、もしかしたらさっきのこと、気にしてるのかもしれない。 ハル君の後ろを歩き廊下に出て、それを伝えると「まあ、大丈夫」と軽く言われて、そんなに気にすることではなかったらしい。 ハル君のお父さんの部屋の前に着いて、小さく息を吐いた。

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