195 / 292

第195話 志乃side

慌ただしい。 バタバタとした足音に、だんだんと腹が立ってきて、煙草を吸う量が増える。 「志乃さん、落ち着いてください」 「···わかってる」 幹部補佐の矢倉(やぐら)がいっぱいいっぱいになった灰皿を取り替える。 「神崎さんと相馬さんから連絡がそろそろ来るはずです。」 「···お前もそろそろ準備しろ。連絡が来たらすぐ動く。」 「はい」 ふぅ、と息を吐く。 梓は今頃浅羽組にいるはずだから、問題は無いだろう。俺が帰るまで楽しんでいてくれたらいい。 「───志乃さん、連絡が来ました。」 部屋の前から夏目がそう言う。立ち上がり、部屋から出て親父の部屋に向かうと後から夏目も追ってくる。 「すぐ向かいますか?」 「ああ」 夏目がそう言うということは、相手側の準備も整っているらしい。 「車回しておきます」 「頼む」 親父の部屋の前で声をかけ中に入る。親父はお袋と話をしていたらしく、ソファーにお袋と寛いだ様子で座っていた。 「行ってくる」 「ああ。こっちはこっちで固めておく。遠慮せず暴れて来い」 「暴れるって···餓鬼じゃねえんだからよ」 つい笑ってそう言うと親父とお袋もつられたように笑った。 なんだか、全部、うまくいくような気がする。 親父たちと別れ、門の前まで出ると夏目と一緒に行く速水が車の側に立ち、頭を下げる。 「行くぞ」 「はい」 車に乗りこんで、深呼吸をした。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!