196 / 292

第196話 梓side

「若、早河です。失礼します」 ハル君のお父さんに挨拶をして、部屋に戻ってくるとすぐに、早河さんという人がやって来た。 「今向かったようです。俺達も向かいます」 「ああ。無理はするな。向こうの指示に従え」 「はい」 その会話で、志乃が戦いに行ったということが分かって、ハル君を見ると、優しく笑いかけられる。 「大丈夫だ。今回のことは志乃が考えたらしいが、それなら志乃は頭が良い。あいつが下手をすることは普通にいけばまず無いな。」 「普通にって、何?···普通じゃないことって何?」 「···仲間が裏切るとかな」 「···確かにはそれは普通じゃないね」 嫌なことを考えてそわそわする俺の隣に、陽和君が座る。 「ねえねえ、俺とハルのことも話すから、梓君と···志乃さん?のこと、教えてよ!」 「あ、うん。いいよ」 「じゃあ早速だけど···二人ってさ、どういう関係なの?」 ハル君は話してなかったのだろうか。 そう思いながら、その質問に答える。 「恋人だよ。···従兄弟っていう関係でもあるかな」 「従兄弟なんだ!なんか、言葉が変かもしれないけど、すごいね」 「すごい、かなぁ?でもそれを知ったのは最近なんだ。ずっと記憶がなくて···」 「えっ」 「忘れてたんだ、志乃のことも、お母さんのことも、全部」 「···えっと、あの、ごめんね。俺もしかしてまずいこと聞いちゃったかな」 多分、俺が不安にならないように話題を変えてくれたんだろう。 今の話題も重いといえば重いけれど、記憶を忘れていた事自体には何も感じていない。ただ、記憶を忘れた理由はまだ、感じるものがある。 「大丈夫。記憶を忘れていた事は何とも思ってないから」 「そうなの···?」 「うん。今は記憶もちゃんとあるしね。」 笑ってそう言えば陽和君はホッと息を吐いた。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!