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第197話
夜になっても志乃からの連絡が来ない。
ハル君も何かを考えているのか、話しはしない。
「梓君、お腹すいたでしょ。ご飯食べよ!」
「ご飯···ハル君は?」
「あの感じだと暫くは食べないと思う。広間の方行こう」
「···うん。」
ご飯は広間で食べるらしく、廊下に出てそこまでの道を歩く。
「···何か悪いことでも、起きてるのかな」
「大丈夫だよ、俺たちは笑ってよ。皆考え込んじゃって、怖い顔してるかもしれないけど、気にしないで」
「でも、俺···志乃がいなきゃ、生きられない」
「···その気持ちはわかるけど、今は祈るしかないんだよ」
広間に着くと、沢山人がいた。
難しい顔をしている人もいたし、柔らかく笑って俺たちを歓迎してくれる人もいた。中でも話しかけてくれたのは鳥居さん。
「あれ、若はー?」
「今何か考えてみるたいで。後でご飯持っていきます」
「そうなんだねぇ。腹が減っては戦はできぬって言葉しらないのかな?」
ケラケラ笑う鳥居さんと、その隣に座る物腰柔らかそうな男の人。気になって見ていると「あ、こっちは世那 だよー」と鳥居さんが紹介してくれた。
「世那です。よろしくお願いします」
「あ、佐倉梓です。よろしくお願いします」
ここに座ってと言われ、腰を下ろすと目の前に御膳が運ばれてきて、運んできてくれた人に頭を下げてお礼を言った。
「それにしても連絡来ないんだねえ。うちの幹部からも来ないんじゃちょっと心配かも。早河さんが行ってるんだもんなあ」
「すぐ連絡が来ると思ってたんですけどね。大丈夫なんですかね」
「まあ何かあればうちも、それに桜樹 組も出てくれるでしょ。」
その会話が気になって、「桜樹組って?」と聞いてみると鳥居さんは隠すことなく説明してくれた。
「眞宮組と同じで、浅羽組と同盟を組んでる所だよー。うちの若頭と桜樹の若頭は友達だし、桜樹の若頭の恋人は元々うちの幹部で、今でもたまに遊びに来るんだ。」
「喧嘩したって言って来る時もありますよ。親父と若と話に来たりも」
「···なんか、フランクな感じですね」
「うん。うちの親父と若は組員を家族だと思ってるからね。そういうのは何でもあり···って、ごめん電話···早河さんだぁ」
その言葉に広間にいた人達は話すのをやめた。
鳥居さんの言葉を真剣に聞いている。
「は?じゃあ立岡って奴が捕まってんですか?···何それ、自業自得じゃないですか。どうするつもりなんですか?」
立岡さんが捕まってる?どういうことか分からなくて、自然と眉間に皺が寄る。
「立岡さんって、梓君の知り合い?」
陽和君にそう聞かれ、頷いた。
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