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第198話
「世那、若のところ行ってくるから、命さんに連絡あったって伝えてきてー。二人はゆっくり食べててねぇ」
「た、立岡さんが捕まってるって···」
「んー···その話はまた後でね。ごめんね」
そう言って鳥居さんと世那さんが広間を出ると、広間にまた声が戻った。
「立岡さんって?」
陽和君にそう聞かれる。勝手に話してもいいのかはわからなかったけれど、ハル君の恋人だし、問題は無いだろう。
「眞宮組の組員なんだけど、情報屋でもあって、志乃の同級生でもある人」
「情報屋···」
情報屋という単語にあまりいい思い出がないのか、嫌そうに表情を歪めた。
「梓君とは良い知り合いなの?」
「···俺はちょっと難しい人で、危うい人だと思ってる。だから···良い知り合いかどうかはわかんないな。」
「何で危ういの?」
「···いろいろあったんだよ」
これ以上話すのは違う気がして、曖昧に答えると、察してくれたようでそこからは質問は飛んでこなかった。
「でもあの人、捕まるようなことはない気が──···あ、嘘。この前撃たれてた」
「えっ、痛い」
「うん。でもしばらくしたらケロッとしてたと思う」
「痛みに鈍感な人なの?」
「わかんない」
多分、こうやって話しているような状況ではないんだろうけど、教えてくれないから仕方が無い。
「無事だといいな」
小さな声で、ぼそっと呟いた。
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