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第201話 梓side
胸騒ぎがする。
鳥居さんと世那さんは、それぞれ仕事を終えると俺達のところに戻ってきて、説明をしてくれた。
けれどその説明をしてくれている途中、ハル君が急いで走ってきて、胸騒ぎが強くなった。
皆も只事ではないと察して、話を止める。
「世那、命に車を回すように言え」
「はい」
「鳥居は陽和を頼む。梓、ついて来い」
「···うん」
世那さんは急いで部屋を出ていき、俺はハル君に「どうしたの」と、恥ずかしくも震える声で聞く。
「とりあえず抗争は終わった。」
「うん。」
「···怪我人がいる。そいつのところに行く、急ぐぞ」
「···わかった」
今は俺が動揺しないためか何も詳しいことは話してくれない。
その怪我人が誰なのか、志乃でなければいいと祈りながら、浅羽組の門の前にまで命さんが回してくれた車に乗り込んだ。
「トラの所ですか」
「いや、でかい方だ。重体らしい」
「わかりました」
重体っていう言葉をこんなに身近に感じるなんて思わなかった。怖くなってグッと拳を握る。俺が頼れるのは志乃だけで、甘えられるのも志乃だけだから、ハル君や命さんに少しでも動揺してるって思われるのが嫌。
「何で怪我したのかな」
「···車が突っ込んできたって。相手の頭を拘束して、もう終わった時に」
「···焦ったんだね。負けたから」
「そうだな」
冷静でいようと小さく息を吐く。
暫くすると病院について、車を降り、ハル君の後ろに病院に入った。
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